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豚汁模型!

鉄道模型のごった煮をゆるくほそぼそ楽しむブログ

2024'03.29.Fri
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2014'04.12.Sat
さて、粛々と模型購入報告ブログと化している豚汁模型でありますが、今日は消費増税の影響かスッカラカンだった銀座の某店でこんなものを買ってきました。


 TMS1978年6月号です。前々からこの号を探していたのですが、なんと100円でした。迷わずレジへ持っていった次第です。余談ですが、袋もまたいいですね。機芸出版社の代理店だからでしょうが、中古本でもわざわざこの袋に入れてくれるあたりが粋ですよね。
 この号では、まず初めに読者のNゲージレイアウトを大々的に紹介し(どうやら機芸出版社に送られてきた写真をほぼ全て載せたようです)ています。中の関水金属(まだKATOではなかったころです)の広告を見ると、スカートが台車にあわせて首を振るEF66(笑)や、現在でも発売されているワキ5000やコキ5500が新製品として取り上げられています。広告欄を見ても、鉄道模型社をはじめとして、松戸のわらそうや西武百貨店のしぐなるはうす、西荻窪のニットー教材(後に一部スタッフが独立しモデルワーゲンの原型となります)、更には先刻惜しまれつつ閉店した伊勢崎のエルホビーなど、かつての名店が並びます。ユニバーサル模型社やコンドル模型、エコーモデルなど、現在も盛業中な店も並ぶ中で、巣鴨のさかつうや赤羽のヤマナカ模型など、行ったことのある店が30年以上の時を越えて活字として読めるというのも一種の感動を覚えます。
 さて、この号をわざわざ買ってきたのは、松井久明氏による「鯨川地方鉄道の車両たち」という記事が掲載されているためです。


 カラーページを含めて10ページにまとめられたこの記事。現在ではネット上でもよく見られる、自分の夢想した架空鉄道について紹介した記事ですが、この当時フリーランスの、それも地方私鉄を扱った記事は皆無と言ってよく、方々の架空鉄道のブログでその影響は多大であったと記されています。この記事が発表されなければ、おそらくは、現在の架空鉄道を楽しんでいる界隈の版図は大きく異なったものになったでありましょう。
 また、模型界においてもこの「鯨川地方鉄道」は多大な影響を及ぼし、かの「地鉄電車」シリーズでおなじみの宮下洋一氏も、この鯨川地方鉄道に大いに触発されたことを述懐しています。氏は1981年・82年のTMSコンペで連続受賞(81年は佳作、82年は特選)していますが、当時は宮下氏いわく「機関車至上主義のような風潮」があり、全く日の当たらなかった地方私鉄系フリー電車(しかもペーパー自作)で出品、受賞したことから大きな話題となりました。その後宮下氏はRM MODELS誌上で次々とジオラマセクションを発表し、16番の世界では下火になりかけていた地面モノを再興させたことはご存知の方も多いはずです。
 そして、Nゲージを中心に扱ってきたこのブログにおいて、この松井氏の鯨川地方鉄道→宮下氏中越地方鉄道の流れ(実際にはこれ以外にも系譜がありますが、ここでは割愛します)を受けた製品として、鉄道コレクションの存在を触れないわけには行かないでしょう。鉄道コレクションの第一弾にはフリースタイルの電車として、モ1031(元デザインは鶴見臨港鉄道モハ100)と、モ1032(元デザインは銚子電鉄モハ500・上田丸子電鉄モハ2320)という車両が含まれていましたが、これこそが時を越えてNゲージの製品として表れた「鯨川」の末裔ではないかと私は思っています。鉄道コレクションの第一弾が発売された当時はNゲージをもう触っていたのでよく覚えているのですが、まず考えたのが「どうしてこんな地味な車両が!」ということでした。考えても見てください。当時は私鉄モノといえばGMのキットを組み立てるくらいしかなく、まだマイクロエースもここまで私鉄モノを出してはいませんでした。それを天下のTOMIX様々が発売するなんておかしな話です。おそらく、「鯨川地鉄」や、この後松井氏が発表された「イワキ交通」(とれいん1987-1)、宮下氏の「中越地鉄」、同じ系統の会田充彦氏の「湘南交通」(TMS1979-8・TMS1982-7)、Nゲージでの発表はおそらく初めてであろう広瀬晴一氏の「神奈川電鉄」(TMS1995-1~3)などに影響された方がTOMIXの企画室にいたのではないかと邪推します。ちょっと手を加えれば「いかにも」どこかの地方私鉄・3セクにいそうな車両をこの後ラインナップし続けるわけですが、TMSなどで発表された「鉄道模型による架空鉄道あそび」がその源流にあるのではないかと、いち地方私鉄ファンであり架空鉄道ファンでもある私は思うわけです。

 さて、長々と語ってきましたが、肝心の記事の内容に関して触れてみます。
 この当時の私鉄モノといえば大手私鉄ばかりでマイナーな地方私鉄にぴったりの車両など製品化さえされていないわけで、ほぼ全ての車両がペーパーによる自作となるわけですが、野暮ったいけれどもしっかりとまとまったそのスタイルは、いかにもどこかにいそうな地方私鉄車両ではないかと錯覚します。レタリングが手書き(!)であったり、テールライトが爪楊枝の輪切り(!!)であったりと随所に見られる古の技法には驚かされます。
 しかし、なんといっても言及すべきはその文章にありましょう。機をてらわず、時に失敗談なども織り交ぜられながら軽快に語られる語り口は、現在の模型記事にはない素朴な感じが大変に新鮮で、現在も色あせることはありません。
 そして、鉄道の「設定」を言い過ぎていないことも魅力の一つでしょう。模型誌での発表ですから、当然作者の世界だけで完結していることが大多数を占めるのが当然であると思いますが、この「鯨川」の記事は、大まかな路線図と基本設定が書き込まれているだけで、あとはいい意味で「適当」であるのです。こうすることで読者の想像力が書き立てられ、このなぞめいた地方私鉄に対してどんどん興味がわいてきます。線路幅は思い切って1435mmにしたかったが、国鉄との乗り入れも考えて1067mmに落ち着いた、などという文言もあり、松井氏自身も自由にこの地方私鉄について考えていたようです。

 なぜ今更こんな記事をまとめているかといえば、まあ書かないと覚えないという私の性格による備忘録的な側面が大きいのですが、やはりこの「鯨川地方鉄道」の記事のような、我々の鉄道模型という趣味そのもののたどってきた歴史を語り継いでいくためにも、私のような若い趣味人がその事実を記憶しておくことが重要であると考えたためです。1978年のTMSですから、ちょうど現在の40~50代くらいの方々に多大な影響を及ぼしたと考えますが、いかんせん我々20代には、現在の模型界、ひいては鉄道趣味界の源流についてまで知識を有している人は少ないように感じます。いかんせんネットで少し情報を集めれば、ここまでに書いたようなことは把握できるわけですが、私という若い世代がこうした記録を書いていることに意味があると信じ、ブログという形で書かせて頂きました。
 架空鉄道や鉄コレという「鯨川地方鉄道」の末裔として、最後にこの記事に経緯を表し、このあたりで締めさせて頂きます。長々と失礼いたしました。


参考文献・HP
鉄道模型趣味1978年6月号(機芸出版社)
模型鉄道 地鉄電車(宮下洋一著 ネコ・パブリッシング)
模型鉄道でよみがえる昭和の鉄道と暮らし―エコーモデル・その世界(ネコ・パブリッシング)
吊り掛け電車をもとめて(http://tsurikakedensha.blogspot.jp/)
軽便鉄模アンテナ雑記帳(http://d.hatena.ne.jp/keuka/)
神奈川電鉄をたずねて(http://rinji99100.web.fc2.com/kana/kana.htm)
資料館の倉庫から(http://caw99100.exblog.jp/)
モデルワーゲン(http://www.modellwagen.com/index.html)

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茨城県古河市在住。「いばらぎ」ではなく「いばらき」です。
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